筆者:尾関一将(スポーツ科学部准教授)
1.速くなるための鍵とは?
あなたは、自分が取り組んでいるスポーツがもっと上手になりたいと思ったことはありませんか? 私も競泳を始めた頃、どうすればもっと速く泳げるのかを常に考えていました。競泳で上達するためには「泳技術」の向上がとても大切です。しかし、この「泳技術」を理解し、さらに発展させるためには、どのような知識が必要なのでしょうか?私の経験から、競泳の技術向上には科学的なアプローチが欠かせないことがわかってきました。
2.競泳コーチングの実際
優れた競泳の指導者は、選手の泳ぎの変化を見逃さず、改善点を見つけて選手に指示や提案を行います。しかし、このような「泳技術」の指導ができるようになるまでには、膨大な時間と経験が必要です。多くの選手の泳ぎを観察し、それぞれの特性に合わせたコーチングを通して、感覚的に技術をつかんでいくものです。私も初めの頃は、選手の動きを見て何を改善すべきか悩むことがよくありました。
そこで役立つのが、客観的な指標です。競泳競技では、「ストローク長」や「ストロークタイム」など、泳ぎを数値化して評価するための指標があります。泳速度はストローク長(1ストロークで進む距離)とストロークタイム(1ストロークにかかる時間)の積で決定されます。
ある選手がタイムが伸び悩んでいたとき、毎日の練習中にストロークタイムを測定しました。練習タイムとストロークタイムの関係性を確認すると、ストロークタイムが短いときにはタイムが遅いことがわかりました。つまり、この選手はピッチを上げることで速く泳ごうとしていたのですが、それによってストロークがうまくできず、タイムが遅くなってしまっていたのです。このような簡単に測定することのできる指標を選手にフィードバックすることで、選手は自分の泳ぎの特性を理解し、その結果、自己ベストを更新することができました。このように、データに基づいて指導することで、選手の信頼を得ることができ、より多くの情報交換ができるようになります。そして、その積み重ねが選手と指導者の双方の成長につながるのです。
3.スポーツ科学で成長を加速しよう
競泳選手は、速くなるためのメカニズムを科学的に理解することで、自身の努力をダイレクトに成果に結びつけることができるようになります。そして、その科学的理解は選手自身の成長を加速させるための道筋を示すだけでなく、他者へのコーチング力を向上させるためにも役立ちます。もしあなたが、自分の競技力を高めたい、あるいは他の選手を支える力を身につけたいと考えているなら、「スポーツ科学」を学んでみませんか? 私たちと一緒に、新しい世界にチャレンジしましょう!
尾関一将(スポーツ科学部准教授)
スポーツバイオメカニクス、コーチング学(競泳)が専門。男子水上競技部の監督として指導するとともに、競泳のスタート動作に関する研究に取り組んでいる。主な担当科目は『水泳Ia, Ib』『競技スポーツ論』など。
関連サイト
○尾関一将准教授
○大体大先生リレーコラム「本物を学ぼう」